いびきに悩んでいる方にとって、夜の安眠を妨げるこの音は自分だけでなく、家族やパートナーにも影響を与える大きな問題です。いびきは、気道が狭くなることで発生しますが、解決策として近年注目を集めているのが「マウスピース」です。マウスピースは、睡眠中に下あごや舌の位置を調整し、気道を確保することでいびきを防止する効果が期待されています。軽度から中等度のいびきや、睡眠時無呼吸症候群の改善にも有効で、手軽に使用できることが特徴です。本ページでは、マウスピースによるいびき防止の仕組みやその効果について詳しく解説します。
そもそもいびきの原因とは?
いびきの原因は、主に呼吸の通り道である「気道」が狭くなることで引き起こされます。気道が狭くなると、そこを通る空気の流れが速くなり、喉や周辺の組織が振動して「いびき」の音を出すことになります。この気道の狭さには、いくつかの以下のような理由や原因が関係しています。
鼻や喉の構造の問題
鼻や喉の形や構造には個人差があり、これがいびきに影響を与えることがあります。例えば、以下のようなことが原因になることがあります。
鼻中隔の湾曲
鼻の内部にある「鼻中隔」という軟骨部分が曲がっていると、片方の鼻腔が狭くなり、呼吸がしづらくなります。このような場合、口呼吸をすることでいびきが出やすくなります。
扁桃腺やアデノイドの肥大
特に子どもに多い原因ですが、喉の奥にある扁桃腺やアデノイド(咽頭扁桃)が大きいと、気道が狭くなり、いびきをかきやすくなります。
肥満による気道の圧迫
体重が増えると、首回りや喉周辺にも脂肪が付きやすくなります。この脂肪が気道を圧迫し、空気の流れが悪くなり、いびきが出やすくなるのです。特に首周りの脂肪が多い人は、仰向けで寝ると気道がさらに狭くなるため、いびきをかきやすい傾向があります。
飲酒や薬の影響
アルコールや一部の薬(睡眠薬や鎮静剤など)は筋肉をリラックスさせる作用がありますが、この効果が過度に働くと、喉や舌の筋肉が緩み、気道が狭くなりやすくなります。特に、飲酒をしてから寝ると、いつも以上に筋肉がリラックスし、いびきをかきやすくなることが多いです。
寝る姿勢
寝ているときの姿勢もいびきの原因に関係します。特に仰向けで寝ていると、舌が重力によって喉の奥に落ち込み、気道が狭くなりやすくなります。これにより、空気の流れが妨げられていびきが出るのです。横向きに寝ることで、いびきを軽減できる場合もあります。
年齢による筋肉の衰え
年齢を重ねると、喉や舌の筋肉が弱くなり、緩みやすくなります。これにより、寝ている間に気道が狭くなり、いびきをかく人が増える傾向があります。筋肉が衰えると、気道を開く力も弱くなり、空気の流れがスムーズにいかなくなるのです。
鼻詰まりによる口呼吸
アレルギーや風邪などで鼻が詰まっていると、鼻呼吸が難しくなるため、自然と口呼吸になりやすくなります。口で呼吸すると、喉が乾燥しやすく、振動が増えていびきが出やすくなるのです。また、口呼吸自体が喉の奥を狭くすることもあり、いびきが発生しやすくなります
睡眠時無呼吸症候群の可能性
いびきが慢性的で、日中の眠気や疲労感がある場合、「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)の可能性も考えられます。この症状は、寝ている間に何度も呼吸が一時的に止まることで、体内に十分な酸素が行き渡らず、いびきだけでなく健康にも悪影響を及ぼすことがあります。SASは、肥満や喉の構造などが原因で気道が一時的に閉塞することで起こります。
マウスピースによるいびきの防止効果
いびきは、気道が狭くなることで発生する音です。そこで、マウスピースを使用することで、気道がふさがらないようにして、いびきの音を軽減できる仕組みになっています。具体的にどのように効果があるのか、以下で詳しく説明します。
下あごを前に出して気道を広げる
マウスピースは、装着すると下あごを少し前に出すように作られています。これは、下あごを前に出すことで、喉の奥に空間ができ、空気の通り道が確保されるためです。いびきの原因の一つとして、下あごが後ろに下がることで気道が狭くなり、空気が通りにくくなることが挙げられます。マウスピースを使うことで下あごが固定され、気道が確保されるので、いびきが発生しにくくなるのです。
舌が喉の奥に落ち込むのを防ぐ
いびきは、睡眠中に舌が喉の奥に落ち込んで気道をふさぐことでも起こります。マウスピースを装着すると、下あごと一緒に舌も前方に引っ張られるため、舌が喉の奥に落ち込みにくくなります。これにより、気道が閉じるのを防ぎ、スムーズに呼吸ができるようになるため、いびきが軽減されます。
個人の口や歯に合わせた調整が可能
マウスピースは市販品もありますが、効果を最大限に引き出すためには、歯科医による専門的な調整が推奨されます。歯科医院では、患者の口や歯の形に合わせて型取りを行い、最も快適にフィットするマウスピースを作成してもらえます。このように、個別に調整されているため、装着時の違和感が少なく、快適に使用できるよう工夫されています。
睡眠時無呼吸症候群にも効果的
マウスピースは、いびきだけでなく「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」と呼ばれる症状にも効果があるとされています。SASは、寝ている間に気道が閉じて一時的に呼吸が止まる症状で、いびきと深い関連があります。マウスピースによって気道が広がると、SASの原因である気道閉塞が減少し、呼吸が止まる回数も減ることが期待できます。SASを改善することで、日中の眠気や疲労感が軽減され、生活の質も向上します。
長期間使いやすい簡便な装置
マウスピースはコンパクトで持ち運びがしやすく、寝るときに装着するだけで効果を発揮します。また、洗浄や保管が簡単で、他の治療器具(例えば、睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられるCPAPマシン)よりも使いやすいです。日常的に習慣として装着しやすく、外出先や旅行先でも気軽に使えるため、持続的ないびき対策として人気です。
マウスピースのデメリットや注意点
マウスピースは多くの方にとって効果的ですが、すべてのいびきや睡眠時無呼吸症候群に対応できるわけではありません。以下の点に注意が必要です:
重度の睡眠時無呼吸症候群の場合
マウスピースでは十分な効果が得られないこともあります。その場合は、CPAP(持続陽圧呼吸療法)などの他の治療法を検討することが推奨されます。
装着初期の違和感や顎の疲労感
初めて装着するときは、顎に負担がかかるため、軽い痛みや違和感を感じることがあります。通常は数日から数週間で慣れることが多いですが、長引く場合は調整が必要です。
歯並びや顎関節への影響
長期間使用すると、まれに歯並びが変化したり、顎関節に負担がかかる場合もあるため、歯科医の指導のもとで適切に管理することが重要です。
まとめ
いびきは自分だけでなく、周囲の方の睡眠をも妨げることがあるため、早めの対策が重要です。マウスピースは、気道を広げることでいびきを軽減し、質の高い睡眠をサポートする効果が期待できる手軽な方法です。特に、軽度から中等度のいびきや睡眠時無呼吸症候群に悩んでいる方にとって、有力な選択肢となるでしょう。マウスピースは歯科医の指導のもと、個別に調整することでさらに効果を引き出すことが可能です。快適な装着感と持ち運びのしやすさもあり、日常的なケアとして取り入れやすいのも大きな魅力です。ご自身や家族のために、まずは専門の歯科医と相談しながら、最適なマウスピースを見つけてみてはいかがでしょうか。良質な睡眠といびきの軽減によって、心身ともにより充実した生活を手に入れる一歩となるでしょう。