投稿日: 2024 年6月14日 更新日: 2025 年3月13日

「美しい笑顔への第一歩」として多くの人に選ばれる歯列矯正。しかし、矯正治療中に気になるのが、お口に装着するインビザライン等のマウスピース(リテーナー)特有の臭いです。洗浄する前に自分でマウスピースを持ってみたとき、生臭いと感じたことがありますよね?つい放置してしまうと、細菌が増殖し悪臭の原因となります。さて、このニオイの正体は何なのでしょうか?
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マウスピースが臭う理由
日常的にマウスピースを使用している人が口臭を発する主な理由は以下の3つと言われています。
細菌の増殖

マウスピースはお口の中に装着されるため、体温に近い温度と湿度の高い環境となります。このような条件は細菌の増殖に適しており、特にプラークや歯周病菌などの細菌が活発になります。食後に飲食物のカスが残っていると、それが細菌のエサとなり、生臭い悪臭を発生させます。食器にこびりついた汚れが取りきれていないように、汚れが残ると臭いも取れません。特に2025年の最近の研究では、硫黄を含む化合物が強い臭を持ち、口臭の主な原因となることがわかっています。
洗浄不足

マウスピースの適切な清掃が行われていない場合、細菌やカビの蓄積が進み、臭いの原因になります。こまめにぬるま湯で洗い、専用のクリーナーや洗浄剤を使用することが重要です。ただし、強すぎる洗剤は材質を傷めるので注意が必要です。clinic(歯科医院)では、超音波洗浄機を使ったメンテナンスが推奨されています。
口内の乾燥
マウスピースの使用は唾液の流れを阻害することがあります。唾液はお口の中の細菌を自然に洗い流し、食べ物の残りを取り除く役割を持っています。乾燥すると細菌が繁殖しやすくなり、生臭い臭いを発生させるリスクが高まります。
マウスピースの材質による臭いの影響

マウスピースの材質にも注意が必要です。例えば、ポリウレタンはそれぞれ異なる特徴を持っており、材質によっては臭いの発生に影響を与えることがあります。傷みやすい材質の場合、清掃が不十分だと細菌が増え、臭いの原因になることもあります。
ちなみにマウスピースに使用される主な材質は以下の4つです。
アクリル樹脂
インビザラインなど、アクリル樹脂は非常に普及している材質で、その主な利点は優れた透明性、耐久性、そして加工のしやすさです。アクリルは耐久性が高く、洗いやすいが、細かい傷がつくと細菌が繁殖しやすいという側面もあります。高い耐久性から長期間に渡り使用できるという点がマウスピースにおいて重要な特性で、特に歯科治療で用いられるナイトガードや矯正装置に適しています。また、色を添加しやすいため、見た目のカスタマイズが可能です。
シリコン
シリコンはその柔軟性と快適さから、多くの口腔製品に使用されています。特に、長時間装着するマウスピースに適しており、使う人にとっての違和感を最小限に抑えることができます。シリコンはまた、非常に衛生的であり、簡単に洗浄できるため、繁殖する細菌の数を抑えるのに役立ちます。これは、特に夜の間に使用されるマウスピースやスポーツ用のマウスガードにおいて重要です。しかし、汚れが残りやすいというデメリットがあるので掃除や保管には注意が必要です。
ゴム
ゴムは自然由来または合成可能で、柔軟性と耐久性を兼ね備えています。ゴム製のマウスピースは衝撃吸収に優れているため、ラグビーやボクシングなどの接触スポーツでの使用に非常に適しています。ゴムはまた、比較的安価でありながら効果的な保護を提供するため、スポーツ用品として広く採用されています。しかし、臭いがつきやすいというデメリットがあるので、掃除やメンテナンスに気をつける必要があります。
エチレンビニルアセテート(EVA)
EVAは特にスポーツ用マウスガードで人気があります。この材質は加熱すると柔らかさが増すため、個々の使用者の口腔内形状に合わせてカスタムフィットさせることができる点が特徴です。さらに軽量でありながら強度も兼ねており、衝撃から歯を保護するのに効果的です。また色や硬度を調整することが容易で、多様な製品設計が可能です。しかし着色汚れがつきやすいということがあり、洗浄には気をつける必要があります。
これらの材質は、マウスピースの用途や必要とされる特性に応じて選ばれます。例えば、夜間に装着するマウスピースには快適性と衛生性が求められるため、シリコンが好まれる一方で、スポーツ用では衝撃吸収性が重要視されるため、ゴムやEVAが選ばれます。
特にマウスピースの表面の滑らかさや多孔性を持つ素材は、細菌の付着や増殖がしやすく臭いの発生に影響を与えることがあります。特に多孔性が高い材質は、小さな穴や隙間が多く存在し、そこに食べ物のカスや細菌が隠れやすくなります。これにより、丁寧に洗うのが困難になり、細菌が増殖しやすくなるため、結果として口臭の原因となります。
また素材によっては表面が滑らかでなく、清掃が難しいものもあります。アクリル樹脂は比較的滑らかで清掃しやすい材質ですが、一部のゴムやシリコン製のマウスピースは表面が粗く、細菌が付着しやすい傾向にあります。清掃がしやすい材質を選ぶことで、マウスピース内の細菌の蓄積を抑え、口臭を防ぐことができます。
さらに、材質によっては、使用中に微量の化学物質を放出することがあります。これらの化学物質が口内環境に影響を与え、場合によっては口臭の原因となることもあります。特に、安い材質や誤った処理が施されたマウスピースでは、このリスクが高まります。
矯正中のマウスピースの臭いの原因
矯正歯科にて主に利用を薦められる、歯列矯正の期間におけるマウスピースの臭いは、装着する装置の汚れが主な原因です。主な要因は以下のようなものが考えられます。
食べ物と飲み物の残留物

歯列矯正中のマウスピースは、特に食事中に食べかすや飲み物の粒子が内部に挟まることがあります。これらの残留物は、マウスピースの表面に付着しやすく、特に色素が強い飲料や食品、例えばコーヒー、紅茶、赤ワイン、カレーソースなどは、色の変化つまり着色を引き起こす可能性が高いです。これらの食品に含まれる色素がマウスピースの材質に吸着すると、取り除くのが難しい汚れを作りだします。当然虫歯の原因にもなります。特に矯正治療中の方は食後の口内洗浄が必須です。
細菌の蓄積

口内は常に細菌が存在している環境で、マウスピースを使用していると、これらの細菌がマウスピース上で繁殖する機会を得ます。清掃が不十分だと、細菌は増殖しやすく、それがプラークの形成につながります。さらに、これらの細菌はタンパク質や他の有機物を分解する過程で悪化し、悪臭やさらなる汚れの原因となる物質を生成します。
唾液の蓄積
唾液は口内を洗浄し、飲食後の食べ物の残りかすを洗い流す役割を持っていますが、マウスピースを装着していると、この唾液がマウスピース内に閉じ込められ、細菌が増えやすくなることがあります。時間が経過すると、唾液中のミネラル成分が結晶化し、カルシウムの沈着物としてマウスピースに付着します。これが硬く、取り除きにくい汚れを生み出すことがあります。特に6月~9月の高温多湿の時期は注意が必要です。
タバコの使用

喫煙者の場合、タバコの煙は多くの化学物質を含んでおり、これがマウスピースに直接付着することで、黄ばみやその他の汚れの主要な原因となります。ニコチンやタールは特に粘着性があり、一度マウスピースに付着するとクリーニングが非常に困難です。
これらの問題を防ぐためには、以下のような対策が有効です。食後は必ずマウスピースを外し、口をすすぎ清潔にすることが大切です。また、マウスピースも流水で軽く洗ったり磨いたりし、定期的に専用のクリーニングソリューションや歯ブラシを用いて、積極的に汚れを除去しできるだけすぐに菌を減らすようにすることが推奨されます。また喫煙する人ははマウスピースの汚れだけでなく、一般的な口内環境にも悪影響を及ぼすため、喫煙習慣がある場合はこの機会に禁煙を検討するのも良いでしょう。
これらの対策により、矯正歯科医院で歯列矯正中における場合でも、マウスピースを清潔に保ち、より衛生的な口内環境を維持することが可能です。
マウスピースの正しいお手入れ方法
患者が快適に矯正治療を進めるためには、日々の正しいお手入れが不可欠です。特に磨き残しがあると臭いや汚れの原因となります。マウスピースの洗浄は、できれば毎回食事の後に行い、食べかすが残らないように注意しましょう。食器の洗い物と同様、汚れをそのままにしておくと、後から取れにくくなるため、早めの対応が大切です。
毎日の洗浄
毎日の洗浄はマウスピースを清潔に保つうえで最も重要です。使用するたびに、まずは温かい水でしっかりすすぎ、食べ物の残りや他の汚れを取り除きます。その後、柔らかい歯ブラシで無香料の液体石鹸や専用洗剤を少量つけてブラッシングします。ここでごしごし擦りすぎると表面を傷つけることがあるので、優しく行いましょう。
口臭予防のための日常的な対策
口臭を予防するための日常的な対策は、効果的な口内環境の維持に欠かせません。ここでは、各対策をさらに詳細に説明し、それぞれがどのように口臭を防ぐかについて掘り下げます。
専用ケースでの保管

マウスピースや取り外し可能な歯科装置は、使用しない時は清潔で乾燥した専用ケースに保管する必要があります。これは装置に細菌やカビが繁殖するのを防ぎ、口臭の原因となる微生物の増加を抑えます。保管ケース自体も定期的に洗浄し、消毒することで、これらの装置が衛生的に保たれるようにしましょう。専用ケースは装置を物理的なダメージからも保護し、型をなるべく初期の形のまま残すなどしてその耐用年数を延ばす効果もあります。まだ持っていない方は使ってみる価値はあると思います。
食後の口内ケア
食後はついマウスピースをそのまま装着しがちですが、食事後は速やかに口をすすぎこまめに洗浄することが大切です。これにより、口内に残留した食べ物のカスや細菌が洗い流され、プラークの組成を予防します。また、歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスを使用して歯と歯ぐきの間をきれいにすることで、歯垢の蓄積を防ぎます。さらに、口臭の原因となる細菌の活動を抑制するために、抗菌性のある口内洗浄剤を使うのも良いでしょう。
歯磨きの徹底

効果的な歯磨きは、口臭予防の基本です。一日に少なくとも2回、朝と就寝前には丁寧に歯を磨くことが重要です。歯ブラシはもちろんのこと、舌の表面も忘れずに磨くことが必要です。舌は食べ物の残りカスや細菌が集まりやすく、不快な臭いの源となり得るため、舌クリーナーを使用して定期的に清掃することが推奨されます。
マウスピースのすすぎ
マウスピースは使用後、必ずきれいな水で丁寧にすすぐことが必要です。これにより、マウスピースに付着した食べ物の残りや細菌を除去し、清潔に保つことができます。定期的に専用のクリーナーや家庭用の洗浄溶液(例えば重曹や過酸化水素水)で深部洗浄を行うことも重要です。
水分補給の習慣化

適切な水分補給は、口内を常に湿らせ、自然な清掃機能をサポートします。乾燥は口臭の一因となるため、日中は定期的に水またはハーブティーなどの無糖の飲料を摂取することが重要です。これにより、唾液の分泌が促進され、口内の自浄作用が活性します。
専用の口腔内の潤い補助商品の活用
歯列矯正を行っている矯正歯科医院の方から紹介されることも多いと思いますが、市販されている口腔内の潤いを保つ製品、例えば口腔スプレーやゲルは、特に乾燥しやすい環境下での口臭予防に役立ちます。これらの製品は唾液の分泌を促進し、口内環境を改善するため、乾燥による不快感や口臭を軽減します。おすすめの商品は歯科医院のブログやコラムで紹介されていることが多いです。
無糖ガムや唾液促進キャンディ・タブレット

無糖ガムやキャンディ・タブレットの咀嚼は、唾液の分泌を促進し、口内を潤す助けとなります。これにより、食べ物の残骸や細菌が自然に洗い流され、口臭の予防に効果的です。ただし、これらの製品は糖分を含まないタイプを選び、適度に使用することが重要です。
これらの対策を継続的に行うことで、口臭を効果的に予防し、健康的な口内環境を維持することができます。また、これらの習慣に加えて、定期的な歯科診療を受けることも、全体的な口内衛生の向上には欠かせません。
口臭予防の為に生活習慣で注意する事
マウスピースの使用に伴う口臭を防ぐための対策を、より詳しくご説明します。各対策を効果的に実施することで、マウスピースからの不快な臭いを防ぎ、全体的な口内環境を改善することが可能です。
マウスピースの定期的な交換
マウスピースは長期間使用すると、表面の小さな傷や摩耗により細菌や汚れが蓄積しやすくなります。これらの細菌は口臭の直接的な原因となるため、定期的な交換が必要です。一般的に、6ヶ月から1年ごとの交換が推奨されますが、使用頻度やマウスピースの状態に応じて、それより頻繁に交換することもあります。定期的に歯科医師によるチェックを受け、マウスピースの状態を評価してもらうことが理想的です。また、交換時には新しいマウスピースを正しくフィットさせ、快適さと効果を最大限に保証するための調整を行うべきです。
食生活の工夫
食生活は口内環境に直接影響を及ぼし、不適切な食事は口臭の原因となり得ます。特に、強い香りのある食材(ニンニク、タマネギ、香辛料)は避けるべきです。これらの食材は消化過程で発生する揮発性化合物が血流を通じて肺に達し、呼吸とともに体外に排出されるため、口臭を引き起こします。また、高糖質や加工食品の過剰な摂取は口内のpHバランスを崩し、細菌の過度な増殖を促すことがあります。代わりに、食物繊維が豊富な果物、野菜、全粒穀物を多く取り入れることで、自然な口内クレンジングを助け、口臭を減少させることができます。
ストレスフリーな生活を心がける
ストレスは唾液の分泌を減少させ、それにより口内が乾燥し細菌が繁殖しやすくなるため、口臭の一因となります。ストレス管理は、定期的な運動、趣味の時間、適切な睡眠、瞑想やヨガなどのリラクゼーション技法を用いることで効果的に行うことができます。これらの活動は心身のリラックスを促し、自律神経のバランスを整え、全体的な健康状態を向上させます。
睡眠時のマウスピースの装着

睡眠時にマウスピースを装着する場合、就寝前の適切な清掃と正しい装着が重要です。また、睡眠中は口が開きやすく、それが口内の乾燥を招く原因となるため、寝室の湿度を適切に保つことも有効です。加湿器の使用や適度な水分補給は、夜間の口内乾燥を防ぎ、マウスピースの清潔さを保ちながら口臭を抑制します。
これらの対策を継続的に実践することで、マウスピースに関連する口臭を防ぐことが可能となります。日々の生活の中でこれらの習慣を取り入れることが、健康的な口内環境を維持し、快適なマウスピース使用経験を提供する鍵となります。
まとめ:汚れはその都度落とそう!
いかがでしたか?今回は、マウスピースの生臭い臭いの原因とその対策について解説しました。マウスピースは、スポーツ時や矯正治療において重要なアイテムですが、日々のちょっとした工夫やケアが、不快な臭いの予防に繋がります。食器を洗う時と同じように、汚れをその都度落としておけば、後から取り返しがつかなくなることも防げます。適切な洗浄、保管、そして生活習慣を意識し、清潔な状態を保つことが大切です。
